介護業界における特殊な市場性

株式会社ゆりかご 介護保険制度

昔から、思っている事ではあるが、介護業界というところは、他業種から見て、非常に特殊であると感じる。

介護保険サービスにしても、障害福祉サービスにしても、今まで措置、官主導といった部分から、契約(利用者の選択の自由)、民の参入による競争原理を生かした方法(量的な部分を優先的に確保し、その後質の向上を目指し、悪質事業所を淘汰する)になっており、非常に画期的で思い切った制度のはずである。

民間の参入により、もちろん自由市場経済も導入されるわけである。
自由市場は、経済全体だけでなく、個々の小さな市場も指し、その根底には、個々の人間の利益追求を目的とする自由な行動は、金銭的かつ社会福祉的利益の点からして最大の結果を産むという考えがある。

その考え方は、介護保険制度が社会保険方式を採用している事からも分かる様に、自由市場経済においても、介入が行われる場合、強制を廃し自発的取引を助ける事を目的としている。政府が課税を行うが、その税収はこのような自発的な市場の円滑な活動を推進する為にのみ用いられており、欧米でいう、「レッセフェール」である。

自由市場は、社会のある種の財の配分機構であり、需要と供給の市場内の現象において、品物の価格及び生産量が決定されていくのであり、この過程において自然に社会における財や資本が配分されていく。ただ、完全に自然発生的な流れに任せると、独占や寡占といった非効率な弊害が起こる為、政府などが市場を監督している。
自由市場経済と計画経済が混合し、混合経済となっているのが、最近は、一般的である。
正に、介護保険制度がこの関係に酷似している。

自由市場の原理は、アダム・スミスの著書の表現を用いて「神の見えざる手」と称される。

レッセフェールのより良い概念として、ジョージ・ソロスが著書で市場原理主義と紹介した。
小泉内閣の経済政策は、史上最も市場原理的であると言われている。
実際の市場では弱者が淘汰される格差社会が問題となっているが、介護業界では、この原理を利用し、質の悪い事業所を淘汰しようとしていると感じる。

しかし、この「自由市場」とは、大きく異なった考え方を多くの介護業界の方はお持ちのようである。
利用者の選択の自由はどこへ…という印象を強く受けてしまう。
自由市場に伴う問題として、前述した独占、寡占や、情報が乏しいものは、適切な判断を阻害され、結果として市場全体も不利益を被る事がある。インサイダー取引や談合などがその例である。
介護業界でも、情報をできる限り公開し、皆が様々な情報を共有できるように目指しているはずであるが、一部の方にとっては、自分の都合によって、情報入手を規制したいと考えている方がいる。
情報入手も、情報提供も自由なはずだし、知らないよりは、知っているほうが、判断材料となり得るはず。
自分の思い通りにならないと、圧力をかけたり、叱咤したり、業界内では結構ある。
せっかく、良い方向に制度が動いているのだから、その制度に携わる者は、この自由市場のメリットを最大限に生かす努力をすべきと考える。
利用者による情報格差をなくし、的確な判断を促し、不利益を被ることなく、自由市場の下で、自己選択により、生き生きとした人生が送れるように介護保険は利用されるものであってほしいと、切に願う…。

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