平成24年1月25日 19:00?20:30 茨城県開発公社ビル
テーマは高齢者虐待について。
今回も医師、病院看護師、訪問看護師、薬剤師、在宅ケアマネ、在宅マッサージ、中小企業診断士、デイサービス管理者、民間救急、施設スタッフ、施設ケアマネ、訪問介護などたくさんの職種、50人が集まり、様々な視点からのグループワークを行いました。
流れとしては、在宅診療のいばらき診療所みとの丸山院長から高齢者虐待についての基調講演が行われ、その後、グループで虐待についてのグループワークを行いました。
私も受講したことがありますが、茨城大学教育学部の滝澤利行教授の講演をアレンジし、噛み砕いてわかりやすく丸山先生からお話があり、虐待としての5分類…
1.身体的虐待
2.心理的虐待
3.性的虐待
4.経済的虐待
5.介護放棄、いわゆるネグレクト
からお話が展開され、虐待の原因を「共感性の低下」とし、その発生要因、または自己虐待、虐待に近い行為、社会的虐待、虐待のメカニズム、アプローチ、介入時のポイント、発見されにくい原因、対応策などをお話し頂いた。滝澤教授のお話を直接聞いた事があるので、とても個人的には分かりやすく、復習となりましたが、直接聞いた事の無い方でも、簡潔にポイントを得た講義であったと思います。
この5分類でテーマを決めてのグループワーク。
このグループが私のところでは、在宅マッサージ、デイ管理者、ケアマネ、ケアマネ管理者、中小企業診断士、訪問介護(私)と様々な職種で構成され、それぞれに体験したことなどを話し合いました。
自分でも、なるほど、そういう視点も大切だなと思ったり、全く介護と違う分野の方の考え方などもとても参考になる事ばかりでした。
ここからは、私が参加して感じたこと、私なりの虐待についての考え方やアプローチについて触れてみたいと思います。
社会情勢として、核家族化などの社会の変化によって虐待は増加傾向にあり、H.23.12.19の茨城新聞の記事によると、2010年度の茨城県の虐待件数は297件(前年比14.2%増)、その中で身体的虐待が7割、加害者の半数は息子、相談や通報件数は432件といった状況があります。
社会の変化には、様々な事が考えられますが、雇用機会均等法などによる女性の社会進出による、介護担い手の不足、家族力の低下、労働基準法の介護休暇の制度活用がなされていない、利用したくてもできない風土、社会の最小単位である家族においての人間間の希薄さ、地域コミュニティの弱体化、権利主義など例をあげると枚挙に暇がありません。。さらに水戸市であれば、他人を家に上げることへの抵抗感、「介護を使う=恥」という概念を持っている人がまだ多くいる、財政難などの理由もあり、潜在的虐待も多いと予想できます。
通報、相談ということは直接ヘルパーからでは行いづらく、ケアマネに話を通すことが多いです。しかし、それがすべて通報につながるわけではなく、ケアマネだって、特別な権限もあるわけではないので、判断に時間もかかるし、慎重に判断せざるを得ません。そう考えると通報件数の432件なんてはっきりいって、氷山の一角でしょう。
特に、身体的虐待が7割という部分については、顕在化しやすいことが理由で、虐待認定しやすいという点もあります。身体的虐待であれば、証拠もおさえやすいです。しかし、5分類の虐待では、私はこの身体的虐待はあまり多いとは思えず、むしろネグレクト、心理的虐待の数が圧倒的に多いと感じます。この記事から裏読みすれば、潜在化した虐待は、ほとんど虐待認定されていないということです。
通報の義務は高齢者虐待防止法にもありますが、努力義務レベル。高齢者虐待の防止は国民の責務となっているが、このことを知っている国民がいったい何割いるでしょうか?
そんな状況の中、我々介護サービス事業者や訪問医療スタッフは、早期発見という点では非常にチャンスを持った立場であります。そんな私達が悩むところは虐待かどうかという「線引き」です。親子間での当たり前の会話を他人が言葉の暴力と感じることは、大いにあります。また虐待していると自覚が無く、無意識に行っているケースだってあります。会話が子供扱い「○○ちゃん、どうしたの?」など慣れてくると介護職員は言いがち。これだって、倫理的には当然NGですが、その関係性を好む利用者さんがいることも事実。なにより、訪問時は良い関係だが、なんだか利用者さん、その家族に元気が無い、形に現れていない虐待ケース、もしかして…と考えた時の判断。これに悩んでしまうと共感を頂ける人は多いのではないでしょうか?
勇気を出して(そもそも勇気がいるという事が問題かもしれませんが)相談した場合、行政が調査に入り、ヘルパーが余計な事を言ったなどと信頼関係が崩れることだって予想できますし、それがもとで、ケアに空白期間を作ってしまったら、事情が深刻化するかもしれません。また、私達は介護が必要になってから利用者さんと出会う、いわば人生の総決算少し前にお会いするので、それまで長い年月共に生きてきた家族関係、生活に対する価値観などはわからないわけです。もしかしたら出会う前、元気なころは利用者さんが若い世代の家族にすごく嫌な思いばかりさせていたかもしれないですよね。虐待した人=悪い人とは限らないと思います。そういう視点を持って、私達は携わらなくてはいけないでしょう。
また、介護者として大切な事は自己覚知です。無意識のうちに虐待しているかもしれないと自分をまず省みることが重要です。ゴミ屋敷のケースでヘルパー事業所として結果を出したいので、早いペースで不要なものを捨てたりして、住環境整備しましたが、私達にとってはゴミでも、その人にとっては宝ということはたくさんあります。オムツ交換の時に、在宅でカーテンを開けっぱなしというのも、虐待のひとつ。そういう尊厳についてもっと現場は勉強しなくてはならないと自分も含めて、今回反省しようと思いました。
次に、行政のスピードも問題の一つ。現場が求めているスピードと行政の対応スピードはメンバーの意見も含めギャップがあるとたくさんの人が感じています。実際1件1件対応していたらキリが無い事はわかります。だから、行政の方には、相談する段階ですでに深刻化していると感じてもらい、迅速に対応することが大切だと思います。また、そのことがわかっていれば、私達は証拠写真等エビデンスを収集し、行政に提示することや、早期の内に相談だけ入れておくなど、行政への私達のアプローチ方法だって工夫すべきだと思います。
介入時とネグレクトには似ている機序があり、当事者と支援者の情報格差、未知への恐怖、周囲の視線、世間体などがキーワードではないかと思います。
これらから考えると、私達が手軽にできる具体的虐待予防策として、
1.ケアマネとして情報提供を行う時、自分の情報収集の中で家族間の関係を現状だけでなく過去から収集する。
2.本人の生活歴、価値観にもっと焦点を当てたアセスメントとプラン作成。
3.まずは疑う視点を持ち、なるべく早く他職種、地域包括センターにつなぐ。
4.通報、相談する勇気を持つ。
5.自分の行動を省みて、虐待の事例などをしっかりと勉強し、改善する。
6.5.から家族や主介護者からの虐待早期発見に努める。
7.怪しいと思ったときは証拠となる事は記録しておく。
などがあって、これら実践に一番欠かせないものは「信頼関係の構築」に尽きると思います。
もっとお互いに、国民間全体で興味を持つという心構えが、高齢者だけでなく、虐待を防止するには大切だと思います。もし、この稚拙な文章を最後まで読んでいただけたのであれば、様々なツールでぜひ拡散して下さい。
TwitterでもFacebookでもMixiでも、なんでも構いません。多くの方に虐待について考えていただければこんなに嬉しい事はありません。
最後に、この水戸在宅ケアカンファレンスの本日の目標でもあった共感という点では、会場にいた皆さんは、ある一定の共感ができたのではないかと雰囲気を感じて思います。
また参加させていただき、色々な事を学んでいきたいと思います。
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